2007年9月26日

不動産流動化に特定受益証券発行信託を利用することで消費税が有利に?

平成19年9月30日に施行される改正信託法では新たな信託として受益証券発行信託が定められました。これまで、貸付信託、投資信託及び特定目的信託に限られていた受益権の証券化が一般に認められるようになっています。

受益証券発行信託の中でも税務上一定の要件に該当する者を受託者とし、過度な繰延べが生じない信託として一定の信託を「特定受益証券発行信託」としていますが、この「特定受益証券発行信託」を不動産の流動化スキームに応用した場合に、消費税が有利になるケースがありそうです。

例えば、時価1億円の居住用建物を信託受益権化した上でSPCに譲渡し流動化するスキームを考えた場合、既存のスキームではSPC側では信託受益権の取得に係る消費税500万円については非課税資産の譲渡等にのみ要する消費税として、取得時に控除や還付を受けることができず、税抜経理をしていれば控除対象外消費税として60ヶ月に分割して費用化していくことになります。その場合、控除対象外消費税については、60ヶ月の償却期間経過前に対象資産を譲渡した場合には未償却分については費用化できないこととなりますので、本例で未償却期間が30ヶ月残っているとするならば、250万円が控除不能となってしまいます。一方、「特定受益証券発行信託」を同様のスキームに適用した場合、信託受益権の譲渡は居住用建物の譲渡ではなく有価証券の譲渡として扱われることになりますので、SPC側では信託受益権の取得時には消費税は課税されないこととなります。したがって、取得時の消費税の負担や控除不能になる控除対象外消費税の問題がないという意味では、消費税について既存のスキームよりも有利と言えそうです。

ただし、「特定受益証券発行信託」は今回新たに規定された制度であり、まだ設定例はなく、特定受益証券発行信託に該当するための要件等に曖昧な点も多く存在し、実際不動産流動化に利用するには多くの問題点がありそうです。これから実際に「特定受益証券発行信託」の利用例が増え、課税関係等が明らかになってくれば、不動産流動化に応用されるかもしれません。

2007年9月26日(担当:吉田 暁弘)

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