2004年12月21日

金融・証券税制改正の詳細

1.タンス株の特定口座への預入制度の見直し
自宅や銀行の貸金庫にある株券(いわゆる「タンス株」)を特定口座へ預入れた場合のその株式の取得価額は、実際の取得価額、名義書き換えの時の株価、平成13年10月1日の終値の80%(みなし取得価額)のいずれかを選択することができました(措令附則(平成14年)14条の3、(平成16年)10条)。現行法ではタンス株券の特定口座への預入れができるのは平成16年12月31日までとされておりますが、今回の改正により平成17年4月1日から再開されることとなりました。ただし、その場合の取得価額については、みなし取得価額の規定の適用はなく、実際の取得価額によることになります。

2.特定口座で管理されていた株式の無価値化によるみなし譲渡損の特例措置を創設
現行法においては、個人が所有していた株式について、その発行会社の清算結了等の事実の発生によって無価値化したことによる損失が生じても、原則として税務上なんら考慮がされておりませんでした

今回の改正により、特定口座で管理されていた上場株式等につき上記の理由で損失が発生した場合には、一定の要件の下で株式等の譲渡損失とみなす特例が設けられることとなりました。その結果、他の株式の譲渡益との通算や、3年間の損失の繰越控除が認められることになります。この規定は、平成17年4月1日以後に特定口座内保管上場株式等につき上場株式等に該当しないこととなった場合について適用されます。

3.金融先物取引の課税方法の見直し
金融先物取引の差金決済等に係る所得については、現行では雑所得として総合課税され、損失が発生しても繰越控除は認められておりませんでした。これが平成17年7月1日以後に行った金融先物取引の差金決済等に係る所得について、株式並みの申告分離課税(所得税15%、住民税5%)となり、3年間の繰越控除も認められることになります。

4.特定中小会社が発行した株式に係る譲渡所得等の課税の特例(エンジェル税制;措法37の13、37の13の2、37の13の3)の適用期限の延長
エンジェル税制とは、特定中小会社が発行した株式(以下、「特定株式」という)を払込により取得した者が、一定の要件に該当する場合に受けられる下記イからハに掲げる特例をいいます。

イ.株式の譲渡益から同一年分の特定株式の投資額を控除できる
ロ.譲渡の日において3年超保有していた特定株式を、上場後3年以内又は上場前のM&A等により譲渡したときは、その譲渡益(税負担)を2分の1に軽減
ハ.上場等の前に譲渡等による損失が生じたときは、翌年以後3年間の繰越控除を適用
この特例は平成17年3月31日までに取得した株式について適用対象とされておりましたが、適用期間が2年延長され、平成19年3月31日までとなります。

5.上場会社等の自己の株式の公開買付けの場合のみなし配当課税の特例(措法9の6)の適用期限の延長
法人が自己の株式を取得した場合において、その株主が交付を受けた金銭その他の資産の価額が、その法人の資本等の部分に対応する金額を超えるときは、その超える部分の金額は配当とみなされ、配当所得として総合課税の対象になります(所法25)。

ただし、上場会社等が公開買付けにより自己の株式を取得した場合においては、上記の規定(所法25)は適用されず、配当とみなされるべき部分の金額については、株式等の譲渡による収入金額とみなして申告分離課税の規定が適用されます(措法9の6)。

平成17年3月31日までの間に公開買付けにより取得した自己株式について適用対象とされておりましたが、適用期間が2年延長され、平成19年3月31日までとなります。

6.金融類似商品に係る収益に対する分離課税等の適用対象範囲の拡大
現在、定期積金の給付補てん金や抵当証券の利息など、多くの金融類似商品について利子所得と同様に源泉分離課税(雑所得;所得税15%、住民税5%)が適用されておりますが、外貨建預金の為替差益については、為替予約をしたうえで円による預入れ及び受取をする場合を除き総合課税の対象(雑所得)とされておりました。

今回の改正で、金融類似商品に係る分離課税等の適用対象に、外国通貨で表示された預貯金でその元本及び利子をあらかじめ約定した率により他の外国通貨に換算して支払うこととされているものの差益が加えられることになりました。

この規定は平成18年1月1日以後に預入をする預貯金について適用されます。

2004年12月21日(担当:石渡正樹)

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