2018年7月 3日

マンション転売業者は消費税還付を受けられないのか?

 最近、マンション転売業者の消費税還付(仕入税額控除)が国税当局によって認められない事案が発生しています。例えば不動産買取再販会社であるムゲンエステート(東京都)は、平成29年7月31日付リリースで、販売用建物の購入が共通対応仕入れと認定されたために全額の仕入税額控除が認められず、国税局から更正処分を受けた旨が記載されています。

 転売目的で入居者付きの中古マンションを購入したときの消費税が全額還付対象となる(課税売上対応として全額が仕入税額控除される)のか、あるいは一部しか還付対象とならない(共通対応として課税売上割合を乗じた金額しか仕入税額控除されない)のかは、古くからある論点ですが、従来は転売目的が明確であり、賃貸が一時的なものについては、原則として全額還付対象とすることが認められてきたものと思われます。ところが、平成17年頃からマンション転売を目的とするSPCの消費税還付で否認事案が発生し、実務的には将来発生する課税売上げ(建物譲渡収入)と非課税売上げ(家賃収入)の見込額の割合により建物購入金額を区分して(消基通11-2-19)、課税売上割合を利用しない等の対応もとられてきた経緯があります。

 その後平成24年に国税不服審判所において、「転売目的でマンションを購入していても、購入時に入居者付きとなっている場合には、共通対応の仕入れである」として、消費税の全額控除が認められない裁決があり、その後はこの裁決に沿って税務処分が行われる事案が増えているようです。

 理屈はともかく、マンション転売業者にとって、購入時の建物消費税が還付(控除)されないのは死活問題であり、納得しかねる問題かと思います。仮に共通対応としての解釈が定着するとしても、共通対応仕入れの合理的区分(消基通11-2-19)や課税売上割合に準ずる割合(消法30③)などの適用によって、適正に消費税の累積が排除されることが望まれます。

2018年7月3日 (担当:平野和俊)

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