2018年4月 5日

遺留分に係る民法改正により事業承継が進めやすくなります

 中小企業の事業承継において、遺留分制度が大きな障害になることがあります。相続人が複数いる場合、自社株式を後継者に集中させようとすると、他の相続人の遺留分を侵害してしまい、結果として自社株式を相続人間で分散保有せざるを得なくなるのです。

 こうした遺留分の問題については、経営承継円滑化法の「遺留分に関する民法の特例」により、自社株式を遺留分算定基礎財産から除外したり(除外合意)、遺留分算定基礎財産に算入する自社株式の価額を合意時の時価に固定したり(固定合意)することにより解決できるとされています。ただ、この特例を適用するためには、推定相続人全員による合意書の作成と家庭裁判所の許可が必要されるため、実務的にはハードルが高いものでした。

 ところが、先日国会に提出された民法改正案では、この遺留分制度が見直され、中小企業の事業承継を進めやすくするための内容が盛り込まれています。

 すなわち、遺留分を計算する基礎財産に含める贈与について、現行民法は共同相続人への生計の資本としての贈与等はどれだけ昔のものでも持戻しの対象としているのですが、改正法案は、相続開始前の10年間の贈与に限定しています。つまり、早期に自社株式を後継者に贈与して10年を経過すれば、遺留分の問題は生じないことになります。

 過去のUAPレポートでもお伝えしたとおり、大幅に拡充され有利になった新・事業承継税制も10年間の時限立法です。

 事業承継を取り巻く環境が大きく変わるこの時を好機と捉え、今までの承継計画を見直し、早期の贈与を中心とした対策を検討してみてはいかがでしょうか。

2018年4月5日 (担当:後 宏治)

 

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