2017年7月31日

「歩道状空地」の相続税評価が変わりました

 マンションなどの建設に際し整備される「歩道状空地」が、評価通達24 の「不特定多数の者が通行する私道の用に供されている」宅地に該当し評価減できるかについての裁判で、国側勝訴の高裁判決を最高裁が破棄したことは以前のUAPレポート(※1)でお伝えしたとおりですが、その差戻し審における口頭弁論で、国側は本件更正処分を全部取り消すことを示しました。

 その後の平成29年7月24日、国税庁は、最高裁判決を踏まえた「歩道状空地」の取扱いに関する「お知らせ(※2)」を同庁ホームページに掲載しました。

 これによると、①都市計画法所定の開発行為の許可を受けるために、地方公共団体の指導要綱等を踏まえた行政指導によって整備され、②道路に沿って、歩道としてインターロッキングなどの舗装が施されたものであり、③居住者等以外の第三者による自由な通行の用に供されている「歩道状空地」については、評価通達24に基づき評価することとされました。

 すなわち、課税庁は、最高裁の判事事項をふまえて今までの取り扱いを変更し、「歩道状空地」の用に供されている宅地で①~③の要件を満たすものについては、今後、「私道」として評価することとしました。その評価の具体例も、質疑応答事例(※3)として国税庁のホームページに新たに掲載されています。

 さらに、新しい取扱いは過去に遡って適用されますので、法定申告期限等から5年(贈与税の場合は6年)を経過していないのであれば、過去に不利な評価額で申告していた人は、所轄の税務署に更正の請求をすることにより、納めすぎとなっている相続税等の還付を受けることができます。

 納税者にとって有利になる取扱いの変更となりますが、気をつけたいのは、「公開空地」の相続税評価には変更がないということです。

 「公開空地」とは、行政指導により広場等として一般に公開されるスペースをいいますが、現在の国税庁の質疑応答事例(※4)では、評価上のしんしゃくを行わないとしており、従前どおりの取扱いが維持されています。

 したがって、評価減の対象となるのは「歩道状空地」のみであり、類似の状況にある「公開空地」については、特に評価減を行わない取扱いになります。同じような性格の「空地」ですが、評価上の取扱いは異なりますので、注意が必要です。

2017年7月31日 (担当:後 宏治)

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※1 UAPレポート「歩道状空地は私道として評価減できるのか」

※2 国税庁『財産評価基本通達24((私道の用に供されている宅地の評価))における「歩道状空地」の用に供されている宅地の取扱いについて』

※3 国税庁「(質疑応答事例)歩道状空地の用に供されている宅地の評価」

※4 国税庁「(質疑応答事例)公開空地のある宅地の評価」


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