2010年11月 4日

100%子会社株式の消滅損と評価損

 平成22年度の税制改正によって、清算所得課税が廃止になり、100%子会社の清算の税務が大きく変わります(参照 2010年4月1日UAPレポート)。

 すなわち、平成22年10月1日以後の解散において、100%子会社を解散し残余財産を確定させたような場合、親会社は子会社株式の消滅損を計上できないこととされた(法法61の2⑯)代わりに、一定の要件の下、親会社は子会社の未処理欠損金を引き継ぐことができることとされました(法法57②)。

 改正前は、子会社が解散して清算した場合には、税務上、親会社において子会社株式の消滅損が計上できたのですが、今後は子会社株式の簿価と同額の譲渡対価があるとみなされるため損金算入が不可能となり、子会社株式の簿価の消滅は結果的に切り捨てになります。

 ここで注目したいのは、子会社株式の評価損です。今回の税制改正による影響は子会社株式の評価損に及んでいないため、従来どおりの一定の要件(法法33②、法令68①二、法基通9-1-11等)を満たせば、子会社株式の評価損を損金に算入することができると考えられます。

 したがって、実務上、債務超過の100%子会社の株式を1円になるまで評価損を計上して損金に算入し、その後に解散・清算することが検討されます。

 この場合には、解散後、簿価1円の子会社株式消滅損は損金になりませんが、未処理欠損金は引き継ぐことが可能となるため、評価損を事前に計上しない処理に比べて親会社の税務コストは非常に軽減されることになります。

 法令上の取扱いは以上のとおり有利な選択が可能となっていますが、実務家の中には「損失を二重に取り込めることになり、いいとこ取りだ。課税上問題が生ずるのではないか?」という意見もあります。100%子会社株式の評価損計上後の解散については、今後の課税上の取扱いの動向に注目し、実行前に慎重な検討が必要です。

2010年11月4日 (担当:後 宏治)


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