2010年9月 3日

グループ法人課税と無利息融資

 平成22年10月1日からグループ法人税制が適用されると、完全支配関係がある内国法人間の寄附金について、寄附金を支出した法人において全額損金不算入(法法37②)とされ、これを受領した法人において全額益金不算入(法法25の2)とされます。

 これにより、100%グループ内の法人間で無償の役務提供があった場合、その提供を受けた会社の税務処理が従前と異なることになるので留意が必要です。以下、親会社が100%子会社に無利息融資をした場合を説例として想定し、その税務処理について説明します。

 この場合、親会社において、無利息融資から通常の金利(対価)相当額の収益が認識されると同時に、その額が親から子への経済的利益の供与(=寄附)があったとされます (※1)。したがって、親会社では、「寄附金××/受取利息××」という処理がなされます。

 子会社では、金利相当額の寄付を受けたとして受贈益が認識され、同時に支払利息が認定されます。すなわち「支払利息××/受贈益××」という処理がなされます。費用と収益が同額で両建てされることから、結果として子会社には課税が生じません。そのため、子会社ではわざわざ両建ての経理処理を行わないことが一般です。

 ところが、平成22年10月1日以後にこの規定の適用を受けると、親会社では、寄附金の全額が損金不算入になり、その結果、受取利息相当額について課税がなされることになります。また、子会社でも、受け取った受贈益が全額益金不算入になることから、支払利息相当額だけが損金算入されます。すなわち、結果として、親会社は利息を受け取っていないのに利息相当額が益金に算入され、子会社は現実の利息の支払いがないのにもかかわらず利息相当額が損金に算入されることになります。

 ここで注意しなければならないことは、子会社側で利息と受贈益の両建て処理が必要とされることです。グループ法人課税適用前は、結果として課税がおきないことから、特段の経理処理は不要とされていましたが、適用後は、支払利息相当額を損金算入するとともに、受贈益の額を益金算入する両建ての会計処理を行い、併せて、受贈益の額を益金不算入とすることが必要となりました。(法基通4-2-6)。

 なお、この両建て処理には損金経理要件が付されていないことから、子会社で会計上の仕訳を失念していたとしても、別表四で加算減算調整を行う両建て処理が認められます。

 子会社の方で受贈の事実を認識するタイミングは、実務的に、親会社に税務調査が入り、寄附金課税の否認を受けた後になることが多いと考えられます。したがって、それまでは子会社で会計上の両建て処理を行うことが事実上できませんが、親会社の税務調査の結果を受けて、別表調整のみで両建て処理を行っても更正の請求が認められるので、手続きを忘れないことが大切です。

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※1 「子会社等を整理する場合の損失負担等(法基通9-4-1)」として相当な理由があると認められると寄附金課税は生じません。

2010年9月3日 (担当:後 宏治)


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