2009年12月29日

みなし配当益金不算入と株式譲渡損を活用した節税スキーム

 現行法人税制においてポピュラーな「節税」策のひとつに「みなし配当+譲渡損」を活用するスキームがあります。

 その代表例は、親会社が保有する子会社の株式を当該子会社に買い取らせることにより、みなし配当について受取配当等の益金不算入規定を活用しつつ、株式譲渡損失のみを実現させる自己株式スキームです。

 平成21年12月22日に公表された税制改正大綱によると、このスキームを防止すべく、次の規制が創設されることが明確になりました。

①100%グループ内(※)の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する 等の場合には、その譲渡損益は計上しない。

②100%グループ内以外の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する等 の場合には、自己株式として取得されることを予定して取得した株式が 自己株式として取得された際に生ずるみなし配当については、益金不算入 制度を適用しない。

(※)100%グループ内の法人とは、完全支配関係(原則として、発行済株式の全部を直接又は間接に保有する関係)のある法人をいいます。

 これにより、自己株式スキームは完全に封じられることになりますが、ここで気になるのが、みなし配当が生ずる場合は自己株式の取得の場合だけではなく、非適格合併、非適格分割型分割、資本の払戻し、解散による残余財産の分配等の複数の場合があることです。

 まず、非適格合併と非適格分割型分割について、大綱では以下のように定め租税回避を防止しています。

③抱合株式(合併等法人が保有する被合併等法人株式)については、みなし 配当の際の譲渡損益を計上しない。

 その次の資本の払い戻し、解散による残余財産の分配等についての規制は、大綱上は明確ではありません。

 たとえば、1株だけグループ外の第三者に保有してもらうことにより、100%グループ内の規制から逃れ(この行為そのものが租税回避であると認定される可能性は大きいと思われます。)たり、解散等のみなし配当が生ずる場合を利用することにより、「みなし配当+譲渡損」を活用した節税が可能になると思われます。

 しかし、大綱に明確には記載されていないものの、自己株式取得と同じ経済効果を生じさせるその他のスキームについて、節税防止策がとられないとは考えにくいと思われます。  大綱には「清算所得課税を廃止し、通常の所得課税に移行し」「所要の措置を講」ずる旨の記載があるため、そこでの規制がある可能性もあります。

 買収後会社清算方式の不動産M&Aなどの「みなし配当+譲渡損」活用節税策が新税制以降も実行可能かどうかは今後明らかになる大綱の解説等に注意しつつ、法令等を慎重に吟味する必要があるようです。


2009年12月29日 (担当 後 宏治)

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