2009年9月16日

清算所得課税の廃止による納税者への影響について

 平成21年7月に財務省HPにおいて「資本に関係する取引等に係る税制についての勉強会 論点のとりまとめ」という資料が公表されました。

 もともとこの勉強会では、自己株式の取得や組織再編の増加といった昨今の状況のもと、資本に関係する取引等に係る税制について、有識者間で意見交換されていました。今回公表された資料によれば、清算所得課税については「解散前後で課税が異ならないよう、清算所得課税を通常の所得課税に移行することが考えられる。」と記されています。仮に清算所得課税が廃止されたとした場合に、納税者はどのような影響を受けるのでしょうか。

 まず法人税法上の欠損金の取扱いが気になりますが、この点については「期限切れ欠損金を利用できることとするなど、バランスのとれた仕組みとする必要があると考えられる。」という意見が出されています。これは、清算所得課税ではそもそも欠損金について期限切れの概念はありませんので、所得課税でも期限切れの概念を無くすことで移行前後の所得金額を一致させ、課税上の不公平が生じないようバランスを図ることを意味します。したがって、清算所得課税廃止後に納税者がこの点に関して税負担面で有利になる、もしくは不利になるということはおおむねないと考えられます。

 とはいうものの会社清算時の役員退職給与の支給については注意が必要です。清算所得課税において役員退職給与は、寄付金のように残余財産の価額に算入する旨の規定がありませんので、支給額の全額は財産から控除されます。ところが、清算所得課税から通常の所得課税に移行した場合には、役員給与の損金不算入(法34②)の規定を受けることとなりますので、役員退職給与のうち過大部分がある場合には、その過大部分について税負担が増すこととなります。したがって、仮に清算所得課税が廃止された場合には、役員退職給与の適正な金額について、より十分な検討が必要になるかもしれません。



2009年9月16日 (担当 藤田 賢)

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