2009年5月29日

「受益者等課税信託の受益者等である法人は、特定の長期所有土地等の
所得の特別控除(措法65の5の2)の適用法人となるか」

 平成21年度の税制改正によって、特定の長期所有土地等の所得の特別控除の規定が創設されました。この規定は、法人が平成21年、22年に取得した国内の土地等につき、所有期間(取得日の翌日から譲渡年の1月1日までの期間)が5年超になってから譲渡した場合には、その譲渡益から1,000万円までを控除できるというものです。

 ところで、受益権化された土地を法人が第三者に売却した場合に、その法人が租税特別措置法上の上記規定の適用を受けることができるでしょうか。

 私法上、受益者等である法人が売却したのは土地そのものではなく、あくまで「信託受益権」であるので、「受益者等が土地そのものを譲渡した」とみなす租税法上の規定がなければ、受益者等が土地を譲渡したことにはなりません。このみなし規定は、法人税法本法に存在しますが、租税特別措置法には明文規定がありません。他方、本件特例は、租税特別措置法の特例であることから、法人税法本法のみなし規定が租税特別措置法に及ばなければ、本件特例の適用を受けることができないと考えられます。

 そこで法人税本法の規定を整理すると、まず、受益者等課税信託の受益者等は、信託財産を有するものとみなされ、その財産に帰せられる収益費用は受益者等の収益費用とみなされて、法人税法の規定が適用されます(法法12)。また、受益者等課税信託の受益者等が有する受益権の譲渡がされた場合は、受益権化された資産負債が譲渡されたこととされ、さらに、受益権化された土地が譲渡された場合にはその受益権を持つ受益者等がその土地を譲渡したものとして、法人税に関する法令の規定(譲渡・交換・収用・買換え等)の適用があることとされています(法人税法基本通達14-4-6)。

 この通達でいう「収用・買換え」の特例は租税特別措置法上の規定なので、課税庁は、租税特別措置法上も受益者等が土地を売却したとみなして各種規定を適用することを明らかにしていると考えられます。すなわち、法人税法本法に存在するみなし規定は法人税に関する租税特別措置法にも及ぶと解され、したがって、受益権化した土地を法人受益者が売却した場合には、その法人が土地そのものを譲渡したとみなされて、本件特例の1,000万円控除を適用することが可能だと解されます。

 例えば、平成21年、22年中に受益権化された土地を購入し5年超運用します。その後土地の価額が取得価額よりも値上がりしたときを見計らってその受益権化された土地を売却すれば、土地を売却したのと同様1,000万円の所得控除が可能となるため、有利な運用が可能になります。

2009年5月29日 (担当 矢萩 貴之)

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