2009年2月26日

受益者指定権を活用した世代飛ばし

受益者指定権とは、信託行為においては特定の者を受益者に指定せず、事後的に一定の者の意思により受益者指定をさせるものをいいます(信託法89①)。この受益者指定権を有する者が、他に受益者が一人も存しない場合において、まだ指定権を行使していないときは、受益者が現に存しない状態となります※1

受益者が存しない信託※2は、課税上、法人課税信託(法法2二十九の二ロ)に該当し、信託設定時に受託者においてその資産の取得に係る受贈益について法人税等が課税されることになります。またこの場合において、受益者指定権の範囲が委託者の親族とされている場合には、相続税等の回避を防止するため、受託者に対して相続税等を課税(法人税等は控除)することとされていますが(相法9の4①)、以後は現実に受益者が指定されるまでは、相続税または贈与税の課税関係は発生しません(相法9の5)。

例えば、資産家のAさんが、信託時に受益者を指定せず、受益者指定権を信託管理人(信託法123①)でもあるBさんに付与します(指定する受益者の範囲はAさんの直系卑属に限定)。そしてBさんの受益者指定権が相続される旨を信託行為に定めておき、Bさんの子孫は信託管理人としてAさんの信託財産を守りつつ受益者指定権は当分の間行使しません。すると、信託時には受託者であるD社に法人税等および相続税等(法人税等は控除)が課税されますが、以後は現実に受益者が指定されるまでは、相続税や贈与税は発生しません。

現実的にこのようなニーズがあるか、あるとしても実務上ワークするのか分かりませんので、このようなスキームを積極的にお勧めするつもりではありません。ただし、受益者指定権というのはなかなか使い勝手がよさそうなおもしろい権利として注目されます。

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※1受益者の存在を予定していない受益者の定めのない信託(いわゆる目的信託、信託法258①)とは異なります。
※2みなし受益者も存しないことを前提とします。

2009年2月26日(担当 平野 和俊)

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