2008年6月30日

収益受益者と元本受益者が異なる信託の取扱い

平成19年度税制改正により信託税制が整備されましたが、法人税法上受益者等課税信託については、信託収益の発生時に受益者等に課税することとされました。そして、受益者等が信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなして、信託財産に帰せられる収益及び費用は受益者等の収益及び費用とみなして、法人税の規定を適用することが明確になりました。

では、信託行為や受益権譲渡の方法により、収益受益者と元本受益者が異なることとなった場合の課税関係はどうなるのでしょうか。法人税法施行令第15条第4項では、受益者が二以上ある場合には、その権利の内容に応じて資産及び負債を有するものとし、さらにその権利の内容に応じて収益及び費用が帰せられることとしています。

資産及び負債については、受益権の内容から収益受益者が有するものとされる部分、元本受益者が有するものとされる部分があります。法人税法上、受益権の評価について明確な規定はありませんが、収益受益者は将来の期待収益をDCF法により評価し、元本受益者については残余の部分を、というのも1つの方法として考えられます。

一方で、収益及び費用についてはどうでしょうか。受益権の内容を考えると、信託期間中に元本受益者に帰せられる収益及び費用はないと考えられますが、まず法人税法上の明文規定がありません。そして、元本受益者に帰せられる収益及び費用がないのではないか、というこの考え方についても、実は詳細検討が必要です。
例えば、信託財産に減価償却資産が含まれていた場合を考えてみます。帰せられる費用がないとすると、元本受益者は権利の内容に応じた減価償却資産は計上しますが、減価償却費は計上できないものと考えられ、不合理が生じます。
また、元本受益者が減価償却費を計上できないとした場合、その分を収益受益者は計上できるのでしょうか。もし、その分を収益受益者も計上できないとすると、収益受益者と元本受益者が同一の場合にはその減価償却資産全体について減価償却費が計上できることとの対比上、整合性が取れているとは思えません。
このように、収益受益者と元本受益者が異なる信託については、まだ明確でない点や検討すべき点が多く、注意が必要です。


2008年6月30日(担当:川村 崇)


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