2007年2月22日

不動産流動化・証券化による利益分配額の減少が見込まれます!~平成19年度税制改正「減価償却制度の改正」より

平成19年の税制改正において、減価償却制度の改正が行われることとなりました。これは、減価償却制度について欧米等主要国との制度格差を無くすことによる国際的競争力の強化及び減価償却費の増加に伴い投下資本をより早期に回収できることとなったことによる新規設備取得への投資等を期待するものです。

しかし、不動産流動化・証券化スキームにおいて減価償却費の増加は、ファンドマネージャーにとって利益分配額の減少に結びつく重大な問題です。今回の改正では、平成19年4月1日以降事業供用の減価償却資産について定率法に大きな改正がありますが、不動産流動化・証券化スキームにおいて影響が大きいのは、むしろ定額法の改正であると考えられます。

1.平成19年3月31日以前事業供用の減価償却資産

今回の改正により、償却可能限度額(取得価額の95%)まで償却が進んだ資産について、平成19年4月1日以後開始する事業年度より、5年間で100%まで均等償却が可能となりました。従来では、定額法・定率法にかかわらず、取得価額の5%までしか償却できませんでしたが、改正により年1%ずつの償却が可能となりました。

2.平成19年4月1日以降事業供用の減価償却資産

今回の改正により、残存価額(取得価額の10%)が撤廃されるため、定額法については法定耐用年数で取得価額全額の償却が可能となりました。すなわち、従来では取得価額から残存価額を控除した価額について償却率を乗じていましたが、その残存価額を控除する必要がなくなります。
また、定率法については残存価額の撤廃とともに、「250%定率法」という新しい償却方法に変更される
こととなりました。
250%定率法とは、法定耐用年数による定額法償却率の250%を定率法の償却率として用いる方法です。ただし、その定率法による償却費が、期首帳簿価額を法定耐用年数による期首残存期間で均等償却(定額法により償却)したとした場合における償却費を下回った場合には、その期より償却方法を定額法に切り替えて償却するというものです。

3.不動産流動化・証券化スキームにおける影響

上記の改正内容を見ると、いずれの改正においても減価償却資産の売却・除却までに計上される償却費の額が、大きくなることがわかります。最終的に、資産を売却・除却することで取得価額の全額が費用化されますが、そこに辿り着くまでの償却費の計上額を大きくするのが、本改正による目的です。
しかし、不動産流動化・証券化スキームにおいて減価償却費計上額の増加は、利益分配額の減少に直結する問題です。以下、本改正においてどのような影響があるのかを考えます。
平成19年3月31日以前事業供用の減価償却資産については、実務上本改正の影響を受けることはほとんどありません。なぜなら、償却可能限度額に達するまでの期間(法定耐用年数に達するまでの期間)、建物を保有し続けるということが不動産流動化・証券化スキームにおいては考えにくいためです。また、平成19年4月1日以降事業供用の減価償却資産については、250%定率法の影響も実務上はほとんど受けません。それは、減価償却資産を、定額法である建物と250%定率法となる建物以外の資産とに区分して計上するケースが多くないためです。
よって、本改正により不動産流動化・証券化スキームに影響が及ぶのは、法定償却方法が定額法である平成19年4月1日以降事業供用の建物ということになります。具体的には、残存価額が撤廃されたことに伴い、償却費が改正前の111%(10/9倍)に増加することとなります。

従って、今後は法定耐用年数よりも不動産鑑定・ER等による耐用年数の方が長いようであれば、後者の耐用年数に基づき、会計上の減価償却費を計上する、といった処理が増える可能性があります。

2007年2月22日(担当:川村 崇)

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