2005年2月22日

日本版LLPにおける節税の可能性

先日、「有限責任事業組合契約に関する法律案(いわゆる日本版LLP法案)」が国会へ提出され、今までにない新しい組織形態が誕生しようとしています。

先日、「有限責任事業組合契約に関する法律案(いわゆる日本版LLP法案)」が国会へ提出され、今までにない新しい組織形態が誕生しようとしています。

LLPとは、「Limited Liability Partnership(=有限責任組合)」の略語で、1.出資者が出資額までしか事業上の責任を負わず(有限責任制)、2.利益の分配が出資金額の比率に拘束されずに自由に行うことができ(自由な損益分配)、3.出資者が自ら経営を行うので組織内部のルールは自由に決めることができる(内部自治原則)、という特徴を持つ柔軟な事業体で、日本版LLPは、民法組合の特例として創設される予定です。わが国ではなじみのうすいLLPですが、欧米では、会計事務所、法律事務所、デザイン事務所、IT産業などにおける「非常に自由で便利な共同事業体」として幅広く利用されています。

税制面では、日本版LLPは、民法組合の特例として制定されるため、法人税の納税義務者とはなりません。したがって、日本版LLPには課税が生ぜず、その出資者に直接課税がなされます(構成員課税=パス・スルー課税)。つまり、「日本版LLP段階で法人課税が課された上に、出資者への配当に課税される」という二段階課税を回避できることとなり、このことが日本版LLP導入の最大のメリットです。

出資者は、日本版LLPから分配された損益について個別に申告することになりますが、注目すべきことは、損益の分配は原則として自由であるということです。例えば、毎年損失を計上している出資者には利益の分配を多くし、毎年所得を計上している他の出資者への利益の分配を少なくするということもできますし、交際費の枠がある法人出資者には交際費を分配せず、個人出資者についてのみ交際費を分配するということも可能です。

このように、自由な損益の分配とパス・スルー課税が認められるため、日本版LLPは、節税や租税回避に用いられることが懸念されていました。

そのため、日本版LLPには、租税回避防止のための一定の仕組みが創設されています。

まず、組合員の損益分配の割合は、総組合員の同意により別段の定めをした場合を除き、各組合員の出資の価額に応じて定めるものとし、自由であるべきはずの損益の分配に一定の制限を課しています。また、過去に見られた民法組合制度を利用した租税回避行為の典型的な事例(出資額を大きく上回る借金をして、航空機や船舶を購入し減価償却費を分配して、損益通算を行う事例)では、大多数の出資者は資金を出すだけで経営に参加をしていない特徴が見られることから、日本版LLPでは出資者の共同事業への参加(業務執行の決定には、原則として、総組合員の同意が必要)を義務づけています。

さらに、今年の税制改正で、1.組合員所得に関する計算書を提出する、2.出資額を超える組合損失は必要経費や損金に算入しない、という取扱いが創設されています。

これら制限の詳細はまだ明らかになっていません。しかし、日本版LLPでは、総組合員の同意による別段の定めがあれば、自由な損益分配が可能であり、また、パス・スルー課税がなされるため、その定め方を工夫すれば、節税につながる非常に有利な仕組みを作ることが可能です。今後新しい事業を展開する計画がある方は、日本版LLPの活用を是非一度検討してみることをお勧めします。

2005年2月22日(担当:後 宏治)

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