2004年10月 4日

繰越欠損金のある会社を買ってきて節税に活用することは可能か?

平成13年4月に組織再編税制が導入されるまで、合併時に消滅会社のもつ繰越欠損金を存続会社に引き継ぐことはできませんでした。逆に存続会社のもつ繰越欠損金は合併によって利用制限を受けることはありませんでした。そこで繰越欠損金を持つ休眠会社を存続会社として、黒字会社を消滅させるいわゆる「逆さ合併」が行われてきました。いくつかの判例・裁決で、「合併法人の経営実体が消滅し、被合併法人の経営実体のみが存続している」ことを理由に「逆さ合併」が否認されていますが、逆に合併法人の経営実体がある程度存続していれば問題ないとも判断され、実務上は多くの微妙な「逆さ合併」が行われてきました。

ところが平成13年4月に組織再編税制が整備され、適格合併については原則として繰越欠損金の引継ぎを認めるとともに、一定の利用制限を設けました。その企業グループに入る前に発生している繰越欠損金は、存続会社のものも消滅会社のものも両方とも使えないという利用制限です。つまり外部から買ってきた会社の繰越欠損金は、例えその会社を存続会社にしても繰越欠損金は使えなくなったのです(法法57)。

但し「みなし共同事業要件(法令112)」を充足している場合には繰越欠損金の利用制限を受けないという例外規定があります(注)。みなし共同事業要件は複雑な規定ですが本件のようなケースで問題となるのが「事業関連性要件」です。事業関連性要件とは一言でいうとシナジー効果の有無で判断されます。事業を行っていない空っぽの会社では事業関連性要件を具備できません。では何らかの事業を行っておりシナジー効果を説明できれば何の問題もないのでしょうか。この場合でも組織再編に係る行為計算否認規定により繰越欠損金の利用を否認される可能性があります。税の負担軽減のみを目的としていると判断されたときは、この規定により否認されることになります(法法132の2)。

では繰越欠損金のある会社を外部から買ってきて、合併によらずに営業譲渡で黒字事業を繰越欠損金のある会社に移す場合はどうでしょうか。営業譲渡は組織再編成ではありませんので上記のような繰越欠損金利用制限規定はありません。だからといって合併で利用できないものが営業譲渡で利用できるというのもおかしなものです。合併と同様に税の負担軽減のみを目的とした行為は否認されると考えておくべきでしょう。

(注)これとは別に含み益がある場合の「引継対象外未処理欠損金額の特例」もあります(法令113)。

2004年10月4日(担当:平野和俊)

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